
「麻の根と葉を落とす」
「麻を束ねる」
白鳥町はもちろん岐阜県での麻(ヘンプ)作りは広く行われていました。特に稲作が不向きな気候の厳しい山間地で多くみられたようです。麻種は売りに来たものを使うこともあり、白鳥では荘川村や遠くは越前から来る商人から紙袋「かんぶくろ」に入れたものを買い求めました。もちろん自家採取もされていました。
雪解けを待ち畑を耕していると種蒔きは4月上〜中旬になったそうです。麻は畑を選ばないと伝えられており後作には大根や蕎麦などよく作ったと伝わります。
種蒔き後、およそ一週間で芽が出ます。成長をみながら間引きをしていきますが、この作業を地方では「くずすぐり」といいます。選り「すぐる」→「すぐり」になったのでしょうか?繊維を収穫する目的での麻は枝を余り出さずにより高く成長させますのである程度は密集させます。あまり「すぐり」過ぎると枝が出てしまうので気をつけます。また、下の方の枝が出てしまったものは払わなければなりませんが、この作業を「めかき」といいます。
この頃から麻は雑草に負けない勢いでぐんぐん成長しますが茎はひよわなため折ったり傷つけないように気をつけます。この地方で「麻畑こざくな」という麻畑は掻き分けて入ってはならない!という意味の言葉があります。


八月にもなると2〜3mに成長し繊維用のものは刈り取り時期を迎えます。茎が小指か薬指くらいが適当とされ収穫は根ごと引き抜き「麻ひき」といいます。根と葉先を落とし余分な枝と葉も鎌の背でしごき落とします。このとき繊維となる表面の皮を傷つけないよう注意が必要です。麻農家では「麻包丁」といわれる専用の刃物もありました。地方によってやり方や使用する道具の違いがみられます。
この後、小束から大束へと縛っていき丈も2mほどに押し切り包丁などで揃えます。そして麻蒸し窯へと運んでいきます。


左「すぐり前の麻畑」
右「めかき」
密度の薄いところや畑の外側ではめかきが必要になる
左「麻種を蒔く」
畝幅2尺(60cm)
畝高8寸(24cm)
通路1尺(30cm)で蒔く
白鳥では普通の家で20坪
ほどは作付けをしていた
右「麻を蒸す巨大桶」
高さは2mを越すものもある

出典:郡上郡白鳥町教育委員会(発行)伊藤久之氏(著者)山田浩平氏(写真)
※白鳥町教育委員会は現在郡上市教育委員会となっています
山地水明な自然のなかで粛々と営まれてきた先人達の暮らしがあます。美濃・飛騨の国は多くを山岳地帯が占め、自然に逆らわない独自の文化を築き上げてきました。その暮らしぶりは決して楽ではなかったであろうことは想像に難しくありませんが、実際にはどのような暮らし方や習慣があったのでしょうか?物が溢れる現代において、お金で便利さが買え、日々の生活のなかで知恵と工夫を必要とすることが少なくなっていると思います。
ここで紹介するのは先人達の知恵と工夫から生まれた独自の文化・山里の生活ぶりを再現した【故郷再現】という冊子から麻づくりを紹介します。