加納さんの漉く美濃麻紙はその独特な麻繊維の性質のため、書家が筆を入れれば、墨が繊維の1本1本に添って滲んで行く様子が見て取れる程の特徴があります。これが書道用用紙として最高な紙を作りたいという加納さんの真骨頂ともいえるでしょう。
 
中国で生産される画仙紙には竹が原料として使われていますが、これも独特の墨のにじみを出すために利用されています。
 昔ながらの手作業による紙漉工法の復活や、和紙の原料となるの楮(こうぞ)栽培への取り組みなどは、丁寧な和紙づくりへの姿勢そのものです。
「書道用紙にとって最適な方法を模索して行ったら、昔のやり方に帰っていった」という加納さんの言葉には説得力があります。
 しかし、独り立ちして紙漉きだけで生活を営むのは厳しい現状であり、美濃和紙ネットワーク21を支える老舗の紙問屋である家田紙工さんの存在があってこそ、その個性豊かな美濃和紙が陽の目を見るといえるでしょう。
 環境に負荷を与えず、持続可能なライフスタイルを目指す家田紙工さんでは、岐阜県の豊かな自然環境を背景にした美濃手漉き和紙の在り方や、取り組み、その成果としてのさまざまな関連商品づくりを行うための新たなプロジェクト
“美濃手漉き和紙専科モノ作りプロジェクト”を立ち上げ、美濃麻紙制作もその一環として取り組みました。
 美濃の若手職人が漉く和紙それぞれの個性を生かした商品作りをプロデュースするなかで、次世代に繋がる美濃手漉き和紙と和紙関連商品づくりが行われています。
 美濃では独自の漉き方が現在も受け継がれています。普通の流しすきのように漉き簀〔す〕を前後に揺するだけでなく腰を使って大きくゆったりと横にも揺すります。丁寧に何度も繰り返すうちに、原料の繊維は十文字に絡み合い、ムラがなくなります。昔から「美濃の紙漉きは背中で覚える」といわれ、初めて紙を漉くとき、漉き簀を持ったその後ろから、手馴れた者が抱えるように一緒に漉き簀を持って揺すりを覚えていきます。技術だけでなく美濃和紙の心もまた次の世代へと伝えられていきます。
 美濃・筑前・豊前の紙は、現存する日本最古の紙である大宝律令(701)のもとに作成された戸籍用紙(名前・性別・年齢などを記載する用紙)に採用され、現在も奈良県の正倉院に保管されています。
 また、飛鳥時代は仏教が盛んで写経(経文を書写すること)に使用するための写経用紙が各地から都に集められましたが、品質の良さをかわれて一番多く納めたのが美濃国でした。
とろろあおいの根を石臼ですり潰す
 幸草紙工房の加納武さんは、このような書画用の和紙を得意としながら楮以外にも藁や麻(ヘンプ)などの植物繊維を利用した和紙も漉きます。楮、雁皮、三椏以外の原料の利用も加納さんの目指す書画用の紙の完成度を高めるためであり、その和紙には加納さんの人柄(志)がうかがわれます。その和紙は強く・やさしく・曇りがない・・・
 かつては何千人といた美濃の手漉き和紙職人も、時代とともに減少の一途を辿りました。急速に発展した現代社会において、暮らしの中で手漉き和紙に出会うという機会は減少し、このままでは日本の貴重な伝統産業や手工芸の持つ、本物の良さやこだわりの手仕事自体が失われていくという状況も起こりかねませんでした。
 そんな中、数年前から先人達の優れた技術を継承しようと、
若手職人たちがベテラン職人に弟子入りし、厳しい修行を経て独り立ちし、それぞれが個性豊かな素晴らしい和紙を制作するようになり、2001年美濃和紙後継者8名が集まり『美濃和紙ネットワーク21』が結成されました。

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 美濃手漉き和紙の歴史は古く、今から約1300年前まで遡ります。紙漉きの生命線である水の恵みは長良川からなり、その山地水明な自然のなかで粛々と育まれてきた美濃和紙。昔ながらの手作業による紙漉工法により1枚1枚丁寧に漉きあげられる美濃手漉き和紙は、その薄さと強靭さ、品質の高さで日本でも最高の品質を誇ります。
 美濃和紙は古来より保存用の文書の紙に利用され、現在では国宝の修復にも活用されています。古来の素材である麻(ヘンプ)と受け継がれる美濃和紙伝統の技から生まれた美濃麻紙と職人(加納武)の世界を紹介します。

幸草紙工房:SAIGUSAGAMI KOBO
加納武:KANO TAKESHI
岐阜県美濃市出身

飛騨国際工芸学園木工科卒業

1998年に美濃手漉き和紙基礎スクールを修了1998年から3年間美濃和紙の里会館で実習勤務

美濃手漉き和紙の伝統工芸士である後藤茂氏に学ぶ。

2003年に幸草紙工房を立ち上げて独立し現在に至る。
本手漉き美濃麻紙
麻(ヘンプ)100% 3,800円/枚
(書画用紙 四匁 約60×90cm)
美濃和紙づくり 十五絵図
出典:岐阜県産業技術センター(美濃・紙研究部)

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山地水明な自然のなかで粛々と育まれてきた美濃和紙。古来の素材である大麻草繊維と昔ながらの手作業による紙漉き手法で一枚一枚丁寧に漉きあげました。
お問い合わせ
馬鍬(まぐわ)で漉き舟にいれた紙料をかき混ぜます
桁(すけた)で均一に漉きあげます
美濃独特の手法により強度のある和紙になります
腰を使った美濃独特の紙漉き
★かみのめぐみ(2007年改訂版)
 美濃手漉き和紙職人のワーク

監督・撮影・編集:山川直人(映画監督)
出演:美濃和紙ネットワーク21メンバー
岡本光平 羽良多平吉 浅野貴徳 他
製作:家田 学
プロデューサー:古田菜穂子
音楽:山辺義
提供:(財)岐阜県産業文化振興事業団
   家田紙工株式会社
   美濃和紙ネットワーク21